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アンカー 1

第8話 人事その1 戦友

どこの世界にも組織で動く以上、人事が重要な点があり、いろんな人種と人物像がそこにあります。

仕事が海外向けであることもあって、日本の組織にも外国人がいますが、私の秘書、正確には、リエゾン(:フランス語で連絡役という意味)という役職を与えて、まあ連絡係り+秘書みたいな役でしょうね)も外国人でした。

 

この女性のことを書かないわけにはいけません。なぜなら複雑な仕事と複雑な海外事情をともに戦ってきた(?)まさに戦友みたいなものでしたから。

少し彼女の事を紹介すると、これがまた、私の平凡な経歴と違って、非常に変わった経歴の持ち主で、当時40歳前後(失礼、女性の年は明記できませんので)の、まあ典型的な、おばさんカナダ人で、彼女の夫はオーストラリア人、子供が女の子2人で彼らは日本の片田舎に居住し、私の秘書として働いていたのですが、何故か夫は主夫業をやっていて、家を守っていました。

彼らは、日本語はあまり得意ではなく(日本にもう4年以上居るんですが、日本語を話す気は、あまりないようです。そういう外国人も居るんですね)

 

家計は全くこの女性の収入によってやっているようで、彼女が大黒柱のようでまあ一生懸命にやっていて、彼らは、何故日本の片田舎で働くことになったかと言うのが、また面白く。それと彼女は、カナダでなんと弁護士資格を持っており、契約書とかそういうドキュメントはお手の物でしたね。でもなんで弁護士が日本で秘書役なんかやるのかねといつも思っていましたが。。

彼らは、国際結婚して、2人で世界中を旅していたということです。その途中、中国から日本へ渡った時に、どうも妊娠をしてしまったために、移動することができなくなり、そのまま日本で過ごし始めました。。。そして出産後のある日、この片田舎のJRの駅で座っていた時に、当時私の上司だった人が、たまたまその隣の席に座って、何かのきっかけで、彼女と話をしたそうです。

 

話をしている途中、彼女が無職でブラブラして居るということを聞き、かつての上司は、暇なら自分らがいる会社で働いてみないかと言ったところ、2つ返事で引き受けたということでした(彼女も働く場所を求めては居たのですが、あまり熱心には職探しをしては居なかったようです)

​今はそんな駅で拾った人を即採用するなんてことはありませんが、当時は、まだ人事採用に関してもそんな 嘘みたいな話もあり、ゆるい規定で採用もあり、良い時代でしたね。

​そうして、その後、紆余曲折を得て、私の部署へ配属ということになり、その後、一緒に働くことになったわけですが、まあ日本語があまり得意ではなく、また漢字はほとんど読めないので、いきおい日本にいながら彼女との会話は英語でするわけです、また役割としては、海外支社との連絡役、また英文ドキュメントの解釈、私が不在のときの海外支社、顧客と日本開発部隊とのやり取りの管理報告をするという役になった訳です。

​海外との会議をやる場合、電話会議が多いのですが、なかなか電話で相手が英語で答弁するのを正確に聞き取るのは非常に難しく、特に相手がネイティブの場合は、砕けた英語で、電話を通して聞くのはなかなか難しい場合があります。

 

そんな時に、日本語が不得意な彼女は、電話の横に居て、難しい局面で、我々に日本人にもよく分かる英語でサポートしてくれ、そういう役割でもありました。しかし、そんな時に相手からすると、英語で言ったことを再度、電話の向こうで再度、同じことを英語で再度話していることが非常に奇妙に聞こえたようで、時々なんで こちらの話したことをまた話しているのかと言われたことがあります。

米国への出張仕事で時々相手側の対応人数が足りない時に、彼女も一緒に出張させるということもあり、米国で仕事をするときは、さすがに水を得た魚と言うか、英語文化での仕事は働きやすそうでした。

​いわゆる、人事評価として、半年に一度は、部下との1時間位かけて面談があります。

そこで、面談はしかたなく彼女だけは英語でやるのですが、やはり欧米人の考えることは、成果を過大?評価するところがありますね。それとそういう面談でも、日本人でもそうですが人生相談のような相談事もあり、なかなか欧米人の悩みというのが難しい場合がありますね。

そんなある時、また、先方の対応上、また彼女に一緒に米国へ行ってもらう予定で、さあ1週間後に米国出張という時、ある日、彼女が言いにくそうに、話があるというので、会議室で話を聞いてみると、

 

「妊娠してしまった」と言い出したんです。

ええーーびっくりしてあっけにとられて、2の句がつげませんでした。

「でも君はもう2人も子供が居るじゃないの?40歳過ぎで、それでこの忙しい時に また?妊娠?」

男性が言う内容としては、今では、殆ど、セクハラになるんでしょうが、

まあその時は、そんな会話は日常でしたね。

「ええ 、ボスが言うことは判るけど、妊娠してしまったもの。。」

私は呆れてしまって、仕方なく、彼女の出張は取りやめにしましたが、それにしても何故もう少し早く、言ってくれなかったのか? と聞いたところ、とても言いにくかったからということでした。まあなんというか、さすがに呆れましたね。

しかし彼らの生活自体はなかなか難しい事があったようで、両親とも外国人でカナダ人とオーストラリア人のため、いきおい、家庭内では英語主体で、両親とも日本語はあまり話せない。

しかし住んでいる所は、郊外の田舎ですから、子供の環境として学校には他に外国人はいないので、学校行事とか、子供同士の問題とかが、まあ世間一般的な問題としてこの家族に押し寄せてくるわけです。まあ子供が小学生の時はまだ良いのですが、流石に中学生とのなるともっと問題が大きくなるだろうと言うことで、子供が中学へ上る前に彼らはカナダへ移住することを決めました。

​そんなこんなで、海外との戦闘態勢時は、存分に力を発揮してくれた女性秘書も10年間私のもとで働いた後、今は、カナダ、カルガリーに家族と一緒に帰って、一家5人幸せに暮らしています。

外国人の部下の中で印象的な人は、米国の支社で働いていた、バリバリの技術者だったのですが、いつもは、得意先の米国自動車会社F社を相手に、我々と一緒にこちらの技術代表として技術会議をしていたのですが、ある時、あらんことか、彼がF社へ転職するという話が上がり、2週間後には本当にF社へ転職してしまいました。

そして、そして

なんと、F社と我々との技術会議にF社代表として出て来るではありませんか。。昨日まで机のこちら側で話していた技術者が 今日は机の向こう側で得意先として出席するという、なんともやりにくい状況で、さすがに人事が自由な米国でもこういう事は珍しいということで、当方の現地の米人従業員も呆れていましたね。

​まさに「海外人事はジグソーパズル」ですな

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